この世界一日目

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2月17日、仔馬が誕生しました。
当日はこんな流れでした。(かなりの長文です)


いつものように夜明け前、
5時ぐらいにカディのところに着いたのですが、姿が見えません。
森の奥へ探しに行くと、出てきましたが、
なぜだか、しきりにお腹のあたりを私に示します。

お産はもうすこし先だと思っていたこともあり、
おっぱいのあたりがかゆくて掻いてほしいのかなあ、
と思ったのですが(そういうことはよくあります)、
そのうち、あ、これは!と気がつきました。

いったん車に戻り、長期戦にそなえて、
あったらよさそうなものを準備し、
森の奥に戻りました。

前々から、ここを出産の場所に選ぶのではないか、
と思っていた居心地のよさそうな窪地に、
やはりカディはいました。
私はちいさな椅子にすわって、カディのそばに陣取りました。


カディは野生の生まれですし、警戒心もひときわ強いです。
きっと、夜ひとりで森の中で産み、私が朝行くとすでに仔馬が生まれている、
ということになるんじゃないかなあ、と思っていました。
経験上、他の与那国馬のほとんどがそうでしたから。

ただ、もし立ち会うようなことがあったら、という想定で、
いちおう、心の中で決めていたことがありました。

それは、明らかな異常が見てとれたり、カディが助けを求めたりしてこない限り、
できるだけ手を出さずに、カディにまかせよう、ということです。
(とはいえ、まれに難しいお産があることも見聞きしているので、
いざという時どうするかの判断はむずかしいですね…)

馬の出産に関しては、事前にいろいろ調べ、動画を見ていたので、
仔馬がどのようなプロセスで生まれてくるかは頭にはいっていました。


さて、6時を過ぎた頃でしょうか。
まだ日の出前、暗いですが空には月があり、
ライトをつけなくても、カディの様子はわかりました。

カディは落ち着かないようすで、私の前をいったりきたり。

そのうち、ばしゃーと破水しました。
カディが横たわり、いきみはじめます。
すぐに膣から、羊膜に包まれた仔馬の肢先が出てきました。
続いてもう一方も。
(正常な始まり方だ、よかった)

カディは何度かいきみましたが、
そこで動きはいったん止まります。
仔馬の肢先をお尻から出したまま、一度立ち上がります。
(だいじょうぶ?ちょっと緊張)

何度かぐるぐる回った後、私の目の前まで来て、
触れるぐらいのところに体を横たえました。
(わーっ)

横たわったとたん、
お尻から、前肢に続き仔馬の頭が出てきました。
続いて、肩が出て、お腹のあたりまで来ました。
(よし、だいじょうぶだ)
(立ち上がった時に仔馬の胎位を調整したのかも)

そこで一休み。
そして、最後に仔馬の腰が出て一気に後ろ肢まで。
後ろの肢先だけ産道に残っていましたが、
ここまでくればもう安心です。
(よかった、よかった)

仔馬は羊膜に包まれています。
すこし破れたところからそうっと指を入れて確認すると、
鼻息を感じられました。
(だいじょうぶ。ちゃんと呼吸ができている!)

羊膜も私の手で破らず、見守ります。
仔馬がもぞもぞ動き出します。
羊膜が破れていきます。
そのうち産道に残っていた後ろ肢もすべり出てきました。
破水からはじまって、ここまで10分ほどでしょうか。
(よくやった!)


しばらくするとカディは、
お尻から羊膜を垂れ下げたまま立ち上がりました。
その動きによって、羊膜が仔馬からはずれました。
へその緒もすでに切れているようでした。

ぐっしょりと濡れた仔馬を
カディが確認し、舐めはじめます。
後産は、40〜50分後と聞いていたので、
お尻から垂れ下がった羊膜もそのままにして見守りました。


ここから先は動画があるのでご覧ください。
まずは仔馬が立ち上がるまでの様子です。


カディは最初のほう、肩と前肢でじょうずに仔馬を支えてますね。
後半、後ろ肢をあげてひっかけ、これまたじょうずに支えています。

まだ羊膜が垂れ下がっていますが、
そのうち、後産と一緒に自然にするっと落ちました。
1時間後ぐらいでした。


次に、おっぱいを探して飲むまでの様子です。


仔馬、じょうずに吸っています。


この後、ちょっとびっくりの展開がありました。
仔馬がおっぱいを飲んで、その後眠ったり、
カディも草を食べ、水を飲み、一段落ついた、と思ったのか、
突然カディが私の足下に来て、どさっと体を横たえたのです。
(なに?)

カディは最初うとうとしていたのですが、目の前に仔馬がいるのを確認すると、
ついに頭も完全に地面に投げ出して、眠ってしまいます。

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自分もお産でエネルギーを使い果たしていたのでしょうね。
私の足下に来たのは、
きっと見張ってて、ということでしょう。

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仔馬がつついても起きない。

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仔馬、不思議そう。

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爆睡中。

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やっと起きたカディ。
完全に寝ていたのは15分ぐらいでしょうか。

ちなみにカディが熟睡するのを見たのはこれが最後。
この後は、自分が横たわっている時でも、
仔馬が寝ると必ず立ちあがって、周囲に注意を払うようになりました。



みっつめの動画、はじめてのウンチです。
生まれてから5時間後ぐらい。
仔馬、ちゃくちゃくと「はじめて」をこなしています。



はじめてのウンチがこれだ!
201702191.jpg



こちらは午後になってからの様子。
仔馬が、かわいい声で鳴いたり、でんぐり返ししたり、おっぱい飲んだりします。
カディはめちゃいいお母さん。


ここは天国か、と思いました。




今回の出産、すばらしい瞬間の連続を体験できました。
加えて、カディは私のことを信頼してくれてるんだなー、というのがわかり、
本当にうれしかったです。


と、喜んでいたのですが…

翌日から、カディの様子ががらりと変わってきました。
警戒心マックス。
自分の空間にヒトが入ってくると、きりきりーっと耳をしぼり、
歯をむき出して威嚇します。

え、私にも?
って思ったんですが、私にもです。

たぶん、おっぱいをあげたりしているうちに、
野生&母性のスイッチがはいったのでしょうね。
いま、カディに触ることはできません。
近づくと悪魔のような形相で怒ります。

唯一の救いは、草やお水を持っていく時に、
私が「待って」といえば待ってくれること。
あと、「バック、バック」といえば後ろにさがってくれます。
距離を保つ、ということならOKなんですね。


幸いなことに、私がすこし離れた場所でじーっとしていて、
そこに仔馬が遊びに来た場合、
それは見逃してくれるみたいなんですね。
鋭い眼光で確認はしますが。

仔馬は好奇心旺盛です。
生まれた日から、すでに何度かコンタクトしています。
(デレデレ)

これは二日目の様子。



仔馬の瞳って青みがかっているんですよね。
彼の目には、この世界がどんな風に映っているんでしょうか。
ヒトって変な形の生き物だなーって思ったでしょうか。
こちらがグルーミングすると、しかえしてくれます。


というわけで、驚きの日々。
カディと仔馬の「はじめて」を、
私も一緒に味わわせてもらっています。


最後に、仔馬の名前です。
いくつかの候補がぼんやりと頭の中に浮かんでいました。
実際に仔馬を目の前にして、声を出して呼んでみたりしながら、
感触をたしかめました。

そして決めたのが、

「ナーリ」。

与那国の言葉で、「流れ」という意味です。
たとえば流れ星は、「ナーリフチ」と言います。

カディとナーリ、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

コメント

No title

うちのところで生まれた時は、2日目はお母さんが赤ちゃんにも厳しくなりました!教育ママゴンみたいな。あれは焦りました…
他の馬が馬房に近づこうものなら、本当に鬼の形相でした💦
カディさんも少しずつ落ち着いてきますね、きっと。

ごろごろさん、参考になる情報、ありがとうございます!
カディ、すこしずつ落ち着いてくれるといいのですが…。

No title

天国は、静かで豊かですね。

No title

おめでとうございます。
出産に立ち会えてよかったですね♬♬
仔馬はとにかく愛らしいし
ママとなったカディをみているのも
にやにやしてしまう。
またアップを楽しみにしています!

srxさん、はい、とても静かで豊かです。

木いちごさん、コメントありがとうございます。
私もにやにやしっぱなしです。

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No title

感動しました。元気に育つことを祈っています。

むらかみさん、ありがとうございます。

No title

読んで私も幸せな満ち足りた気持ちに。
ありがとうございます。

よく行く場所に、ばん馬がいて来年から出産ラッシュです。
何度か出産に立ち会って感動の体験しましたが、
出産後爆睡する馬は初めて見ました(笑)
この母馬たちも、威嚇はしないけれど仔馬が私に近づいてくると、
なにげなく私の前を馬体で遮るんですよ。
これからもブログ楽しみにしています。

makiさん、ばん馬の出産に立ち会われているのですね。
ばん馬は大きいから、出産も迫力あるでしょうねー。
読んでいただきありがとうございます。

No title

こちらも待ちわびていた瞬間。
おめでとう。
貴重な動画 とてもとても可愛いらしく幸せですね。

sashoさん、見てくださってありがとうございます。
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